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『週刊アルペン語り』外伝 4 初心者への虎の巻

 アルペン1年目で新2年生のおぐしです。

 アルペンスキーヤーのみなさん、滑りのアドバイスは誰に訊いてますか?大抵は自分よりタイムが速い人、経験の長い人に訊くでしょう。しかし、本当にそれで合点のいく答えがもらえてますか?あまりに背伸びしすぎた答えをもらい「?」が浮かぶことも少なくないでしょう。そんなわけで、アルペンガチ初心者の自分があえてアルペンスキーの0から1への成長の仕方を記そうと思います。ゲームで言うところのLv.1になるまでのチュートリアル編です。Lv.2以降の成長の仕方はぜひ身の回りの速い人に聞いてみてください。経験者の方も再確認や初心に懐かしみを抱きつつお読みになられたら幸いです。

※今回の記事はアルペン滑走日数100日未満むけです。

 

 ます、ポール練習を行うにあたってそもそもスキーが上手くないとポールのタイムも上がりません。なぜならポールがないフリーバーンでの滑りの上手さが、ポールに入った時の実力の上限値だからです。ですからまず基礎練習でスキー自体の実力をあげる必要があります。そうして初めていざポールに入った時にポール特有の技術を身につけて活かすことが出来るわけです。以上を念頭におきアルペンスキー初心者にこれだけは身につけるべきだと思うのが以下の基礎技術2点+ポール内技術1点です。

①重心の位置

②外足だけに乗る

③ポール内でのライン取り

 

1.重心の位置

 まず何にも置いて重要なのが重心の位置です。自分も含めて初心者が陥りがちで修正も中々難しいのが重心の位置。大抵の初心者は板の制御に自身がないので徐々に後ろ重心になり、少し速さに慣れてくると姿勢を低くして後ろ重心を改善できたと思いきや尻が下がって結局後ろ重心になっています。

 スキー板はブーツを基準に主にトップ側が板を曲げる性能、テール側が板を走らせる性能を持っています。ではどこに重心を持ってくればいいのかというと、もちろん両者の間にあるブーツ、さらにそのブーツの中心の土踏まずに載せればいいわけです。

 とはいっても、重心の位置は自分の意識だけで楽に矯正できるほど簡単ではありません。そこで重心の板を改善できる練習方法の1つとして片足スキーを紹介します。

 この練習のゴールは安定して次ターンの外足一本だけで2,3秒滑りそのまま外足だけでターン、今度は足を切り替えて再び次の外足に乗ってターンをする、だけです。

Step.1

 まずはしばらく次ターンの外足だけで斜面に対して真横あるいは斜めに滑ります。

 ポイントは①板のトップを下げてテールをあげること②板と体の向きを揃えること

 この2つを意識することで強制的に板の真上に重心を乗せられる&前脛がブーツから離れなくなります。(でないとターン以前にまともに片足で滑れません)

Step.2

 そのままの重心をキープしたまま外足の膝を内側に少しぶちこむと勝手に板が曲がってくれます。

 ポイントは①常に腰を高くすること②ターン開始時に焦って無理やり体から回さないことです。ハの字でターンする時もターン開始直前に体や腰からではなく外足を内側に向けて方向付けをした直後に体を板に追随させて外スキーに抵抗をかけているわけで、初めから体を回すと上手く抵抗がかからず曲がらないのです。

Step.-1

 ですが初心者がいきなり片足をあげて滑るのは簡単ではないです。そこでおすすめしたいのが両足とも接地してていいので、①両足のスタンスを狭くする②低速で滑る③外足:内足の荷重比率を10:0にする、の3つを意識して滑ってみてください。慣れてきたら徐々に足を上げれそうなタイミングで上げていきましょう。

 意外と大事なのが②で、中高速で滑ると前に滑る力でなんとなくバランスが取れてしまうので敢えて斜面横向きに滑り速度を殺すことでバランス感覚が鍛えられます。①はターン中に内足が邪魔になるのを防ぎ、③は片足だけで滑るための布石です。再度確認ですが忘れてほしくないのは、常に前脛がブーツに密着していて重心が土踏まずに乗っかっていることです。

 

2.外足だけに乗る

 まず初心者のうちは内足は切り落としても問題ないくらいどうでもいいので外足だけに集中しましょう。そもそもなぜ外足乗る(=内足の乗らない)のかというと、ターン中は外スキーの方が内スキーよりも滑走距離が長いので、内スキーに重心を置いて滑ると板が体よりも先走ってしまい制御不能になったり後傾になって悲しいことがおこります。(いわゆる"発射")

 外足だけに乗るというのは重心の位置の矯正よりは幾分か簡単ですが、前述の片足スキーでは既に外足だけで滑れるようになって外足:内足の重心割合が10:0に出来たと思いきや、両足で滑るとまた内足に自然と体重が移ってしまうものです。

 これを改善するために、ターン中ずっと外足に乗り続けてターンが終わったら、次の外足に一気にジャンプして重心を移してから外足100%でターンを開始して次ターンの切り替えまで乗り続ける練習をしましょう。

Step.1

 まずは片足スキーの延長戦です。

 上図のように外足だけでターンが終わったら、

 次の外足に飛び移るべくタメ攻撃の予備動作に入って、

 一気に次の外スキーに乗り換えます。この間、内足に乗ってる時間はまさしく0秒です。

Step.2

 これをふまえた上で今度は両足を雪面に着けた状態で同じことをやりましょう。(ほんとは内足を切り落として滑ってやりたいところですが、残念ながら両足の方が安定する上に速度も出ます)

 まずは外足に乗ってターンを処理し、

 次ターンへの切り替えギリギリまで外足に乗り続けます

 写真ではわかりにくいですがそこから次のターンの外足に一気に体重を移動させます。この時に腰と腕も一緒にあげると意識的に動かすことができます。 

 そうしてしっかり外足に乗れたら初めて角を立ててあげて再び外足100%でターンをしていきます。腰や頭が上下によく動いていたら上手く重心を移動ができている証拠だと思います。

3.ポール内でのライン取り

 さて、以上2点で最低限必要だと思うスキーの技術は抑えました。次が初心者がまず抑えると嬉しい3点のうち唯一のポール内での技術です。

 アルペンスキーのタイムの速さは単純化すると、(タイム)=(スキーの滑走距離)÷(スキーの滑走速度)、なわけです。このうち特にスキーの滑走速度は慣れや技術や雪質など様々な要素が絡む一方で、滑走距離は幾分か単純でスタートからゴールまでポールとポールの最短距離を結べば良い訳です。

 例えば下図(今シーズン序盤のおぐし選手)を見てましょう。ここでは外足とポールとの距離に注目します。なんたって、ここまで初心者は外足だけ気にすればいいと解説したので内足は一度無視します。

 このおぐし選手は外足がポールから1mは優に越えているように思います。一方で下図(今シーズンで最高潮期のたかみね選手)はどうでしょうか。

 この選手の外足とポールの距離は50cmくらいでしょうか。仮にポールを中心に半円の孤に沿って滑るとすると両者の滑走距離は1ターンにつき、上のおぐし選手は約310cm、下のたかみね選手は約150cm。ポールと外足の距離が50cm変わるだけでたった1ターンだけで150cmも滑走距離が変わります。岩岳学生スキー大会のスラローム競技では50旗門前後あるので、滑走距離だけで150cm×50=7500cm、超おおまかに75mも滑走距離に差が出ます。これをスラロームの平均速度くらいの時速25kmでわると10秒分の差が生まれます。さらに両者はスキーの技量が違うのでたかみね選手の平均速度やストレート・ヘアピンの処理速度なども圧倒的に早いことを考えるとラップタイムが45秒くらいのコースでは20~30秒程度の差が軽くつくわけです。

 というわけで色々なことを考えるよりも、外足とポールの距離を近づけて滑るのがタイムを縮めるのが初心者にとって圧倒的近道なわけです。

 というわけでそれを実現する方法が下記の通りです。

Step.1

 まずはライン取りを学びましょう。よくある"ラインを高く"ってやつですね。

 上図はJ.S.C.コーチを務める徳武選手です。ポールの真横で既に板が下を向いている状態です。これにより減速を最小限に抑えて次のポールへと向かっていきます。

 こちらは悪い例のおぐし選手(SL人生4日目)。ポールぎりぎりになってなんとか曲がろうとするあまりポールの真横では板がほぼ真横を向いています。この状態では雪面から最大限の抵抗を受けてしまい大減速にも繋がる上に、曲がりきれておらず旋回弧も大きくなっています。

 両者の違いはポールの真上を通過した時の位置と板の向きで決まります。

 徳武選手はポールよりもかなり高い位置で板が下を向いているのに対して、

 おぐし選手はポールよりやや上の位置で板がまだ横を向いたままです。

 これをショートポールを使って練習します。ショートポールが張ってある時に、コース整備の際に2,3ターンだけやってみて欲しいのが下図の練習です。

(※実線が外スキー、波線が内スキー)

 ハの字でコース整備をして、ポールの真上に来た時には高い位置で外スキーの板がなるべく下を向いてる状態を作りそのまま外足に乗り込んでください。その際、内足はポールの内側を通ってもいいので外足の軌跡に注力してください。極端に言うとこの位置が実際のロングポールやGSでも外スキーが通りたい理想の位置です。このイメージをしっかり掴むことが非常大事です。

左:比較的良いライン 右:悪いライン

※コース整備とは皆で協力して安全なコースを作る時間なのでほどほどで。

Step.2

 さてStep.1をマスターすると邪魔者が現れてくるのです。内足です。外スキーがポールの近くを通りたいのに、内足が外スキーとポールの間にいるのです。(あ〜内足切り落としたい)

 これを最も簡単にある程度克服する方法が両足のスタンスを極限まで狭めることです。Step.1での図を見比べてわかる通り両者の板と板の間の間隔はダントツで徳武選手の方が短いです。

 練習方法は簡単、なんでもいいので日頃のフリースキーの時から極限までスタンスを狭める意識をもって滑ることです。狭められてると思っているそこのアナタ!誰かに動画撮ってもらって見てみなさい!まだまだ全然広いですけど??

 

 以上が今シーズン初めてアルペンスキーを始めた僕が思う総滑走日数約100日未満の初心者が真っ先に習得すべき技術です。たぶんこの3点はアルペンスキーの「ア」の一画目の折れる手前くらいなんだと思います。ですが、いつまでも後傾ではどんな技術を学ぼうが板の制御能力では常に劣り続け、内足に乗ってるいるようでは少し上達した時に難しいセットやスピードが出た時にすぐDNF・DSQするでしょう。いつまでもラインが低いと他の技術を身につけても目の前のポールに翻弄されその技術の真価が発揮されることはありません。

 学ぶべき技術はたくさんありますが大学から始めるアルペンレーサーも多いので切磋琢磨してアドバイスやタイムを競いながら頑張りましょう!いつでも挑戦待っています。

それではいつかどこかの雪山で

文責:小串