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『週刊アルペン語り』第二十回 Evolution & Revolution

 みなさんこんばんはアルペン語りのお時間です。早いもので20回目を迎えることができ感慨深いです。今回はこの企画の発起人ノグチがお送りいたします。私ことですが先日修士論文発表会が終わりようやくスキーに集中できるようになりました。学生最後のスキー生活を楽しみ切りたいと思います。

 さて二月中旬となりF1開幕が近づいてきました。続々と新車発表会や契約更新が行われ盛り上がりを感じます。ハミルトンのフェラーリ移籍はF1公式のリリースがでるまで全く信じられませんでした。今日レッドブルが発表し全チームの新車があらわに。個人的にはメルセデスAMGのW15のカラーリングが気に入ってます。シルバーが映えますね。

Mercedes AMG W15

Newマシンお披露目ということで各チームがどのようなアップデートを施してくるか興味深いものです。F1チームは新車のコンセプトについてEvolutionやRevolutionといったワードをしばしば使います。この二つの響きはとても似ていますが意味合いは全く異なります。Evolutionは「進化」でありF1界では正常進化と評されます。昨年圧勝したレッドブルRB19はRB18の正常進化型でした。正常進化型は同じコンセプトで性能を煮詰めたものであり確実な向上が期待できます。しかし極めれば極めるほど伸びしろは小さくなるとうデメリットを抱えています。対してRevolutionは「革命・革新」でありコンセプトを一新するという意味です。革新的なアイディアは他チームを出し抜ける可能性を秘めています。ですが昨年までのコンセプトを捨てそれまでの蓄積がなくなります。新コンセプトの理解を1から始めることとなり同じコンセプトを踏襲している正常進化型のチームよりも遅れをとることとなります。マクラーレンは多数の革新的アイディアをNewマシンに詰め込んだらしく打倒レッドブルへ期待がかかります。

 次はF1チームがどのようにアップデートをしているかを紹介します。始めにアップデートの方向性を決めます。例えばブレーキ姿勢の安定化やストレートスピード向上など。次に技術の研究開発。F1では予算制限があるためやたらめったら開発を行い失敗することは許されず確率の高い技術を厳選する必要があります。ファクトリーで風洞実験や流体シミュレーションCFDなどを用いて最高のパーツを製作し現場に送り出すのである。最後に実車での走行テストを行う。届けられたパーツは無数のセンサーやフロービズ(空気の流れを可視化する)を用いて膨大なデータ収集をしエンジニアたちが解析に励みます。またドライバーからのフィードバックも参考にしNewパーツの性能を評価しクリアしたものが実戦投入されるのである。

 ざっとアップデートの流れを書いたがこのプロセスはスキーにも転用できる。向上ポイントの選定、新技術の考案とシミュレーション、雪上でのテスト・分析・評価。スキーは滑走時間が少ないため雪上以前での仕事がF1同様に重要となってくる。新技術の考案とシミュレーションに関してはEvolutionとRevolution両方の思考が重要であると考えている。Evolutionは今のスキー技術の精度を高める作業であるため比較的容易である。対してRevolutionは難しい。なぜならその技術の感覚が全くないためである。テストをすると気持ち悪さを感じることもあるだろう。しかしそこに成長のカギがある。コーチに指摘されたことができないのはそもそもその感覚がない可能性が高い。仮に雪上ですぐ修正できるのなら困ってすらないだろう。そのためのシミュレーションである。あらかじめどのような動きをするかを計算できれば雪上で戸惑うことは少なくなる。むろんシミュレーションと雪上での結果が違うことは大いにあり、その差をいかに埋められるかが効率的な成長に必須なのである。

 私はシフリンとオデルマット推しであり日夜彼らの滑りを研究しています。岩岳で彼らの影が見えるくらい上手くなるので期待しといてください(笑)

 以上となります。お読みいただきありがとうございました。