早稲田大学シュプリンゲンスキークラブ公式ブログ

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シュプリンゲンの皆様へ(4年西崎)

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岩岳の中止が発表されてから、別の世界に来てしまったような違和感が続いている。どこに目標を定まれば良いのか分からないような、ふわふわとした感覚だ。その感覚は、学生ラストランを終えて一旦スキーを引退した今もまだ消えていない。まるで世界のウラ側に来てしまったような寂しさと空虚感がある。でもこの感覚は、今までシュプリンゲンとして、オモテ面の世界を過ごさせてもらってきた証でもあると、僕は思っている。それは岩岳団体優勝のために大学生活の日々を捧げる、最高の世界だった。

 

 

高校の部活でアルペンスキーを始めて、すぐにこの競技にハマった。でも高校のスキー部は顧問も部員も初心者ばかりの緩い部活で、やる気があっても、どう頑張れば良いのか分からなかった。
だから、大学ではもっと本気でスキーをやりたいと思って、シュプリンゲンに入った。
当時のシュプは、井堀さんと武井さんの二大エースを擁し、2年連続で岩岳男子団体総合で上位入賞していた黄金期。少数精鋭を謳い、スキーに対する姿勢も実績も、他のサークルとは違って見えた。

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2016年AWの集合写真。当時坂本先輩がAW委員長で、井堀さんが幹事長でした。

同期に入ってきたのは美崎と時田の2人だけ。美崎はジュニアからスキーをやっている徳島の国体レーサー。時田は井堀さんの後輩にあたる早稲田高校スキー部出身。特に美崎は筋金入りのスキーオタク。知識も経験も自分より遥かに豊富な同期は、僕にアルペンスキーの世界のことを色々と教えてくれた。

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美崎と時田

その美崎を筆頭に、この年のシュプは戦力的な増強が見られ、岩岳団体総合優勝への期待が高まっていた。しかしそんな矢先、夏休み中に大エースの井堀さんがカバディの練習で前十字靭帯断裂。シーズン中の復帰は不可、岩岳団体上位入賞は絶望的となった。結果は12位。優勝からは程遠い成績となった。

当時四年生だった井堀さんは、就職浪人して現役続行を決意。殆ど岩岳のための就職浪人だったようだ。井堀さんと武井さんのラストシーズンとなった翌年、繰り上がりで2年生で幹事長になった僕は、サークル目標として「岩岳団体総合優勝」を掲げた。

団体優勝という目標を共有して「強いシュプリンゲン」像を作るために、経験者にターゲットを絞った新歓、ハードなオフトレ、飲み会を無くして食べ放題での食トレに変更、更にジムでの自主練やプロテインの推奨を行った。オフトレでタバタをやり始めたのも、トレパーにジム練が加わったのも、LINEグループ「ありがとうプロテイン」ができたのも確かこの頃だ。そしてシーズンが近づくと、暇さえあれば岩岳に出る他チームの戦力分析を行い、団体優勝のための戦略を立てる。こうしてシュプは脳筋スキー馬鹿サークルへの道を極めていった。

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その成果もあってか、この年の新歓では東京都で20位前後の実力を持っていた高橋、埼玉から関東大会に出ていた青沼を含む、スキー意欲の高い新入部員の獲得に成功。岩岳優勝への期待が高まった。

そして迎える岩岳は、実力順や学年順に基づく滑走順が一般的な中で、合計得点を上げるために敢えて井堀さんが2走に回るなど、完全に団体優勝を見据えた配置を整えて臨んだ。
結果は団体準優勝。スーパールーキー2人を擁する新潟大学学友会スキー部に完敗した。
それでも、チーム全員が団結して表彰台を勝ち取った瞬間だった。

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岩岳国学生大会男子総合準優勝

井堀さんと武井さんの2大エースが抜けた翌年、2年目の幹事長に就任していた僕は、脳筋スキー馬鹿サークルの方針の維持を図った。
尹先輩が作った真っ黒な厳ついビラを配り、全てノンアル食べ放題で新歓コンパを行い、お試しトレでは新入生をジムに連れて行った。
その結果、実力者の野口と高峰を含む6人の部員を獲得。ポッカリと抜けた二大エースの穴が少しずつ埋められていった。

それでも岩岳団体総合優勝は難しいと判断し、特シーの取得を目的に美崎をBチームに配置。戦力を分散させた。この選択は今思うと間違いだったのかもしれない。
来年につなげる形で臨んだ岩岳は、しかし予想外の健闘を見せ、男子Aチームは団体総合3位に。2年連続の表彰台となった。

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岩岳国学生大会男子総合3位

そして、美崎と僕にとってラストイヤーとなった今年、2年続いた幹部が変わってからも、新歓は好調が続き、男女4人ずつ獲得。チームとしての戦力も大幅に向上し、再び岩岳優勝への道が現実味を帯びてきていた。
しかし、記録的な雪不足、そしてコロナウイルスの影響により全国岩岳学生大会は東日本大震災の2011年以来の中止が決定。僕が四年間見てきた、岩岳団体総合優勝の夢は潰えた。

この四年間、僕は夢のような競技生活を送らせて頂いたと感じている。僕自身は戦力的には主力になれなかったが、皆のおかげで岩岳団体総合優勝という大きな目標を常に目前に感じながら、チームとしての目標達成を目指して練習してこれた。毎年、岩岳優勝への期待と緊張を抱きながら大会に臨んでこれた。そして僕自身、高校時代からは見違えるくらい速くなれた。それはチームに恵まれなければ、そして部員や自分自身の状況、自然環境や社会情勢に恵まれなければ成し得なかった。コインのオモテ面が出続けているような、本当に幸運なことだったと思う。だからこそ、ラストイヤーで岩岳が中止になった瞬間に、突然世界の裏側に来てしまったような空虚感に襲われたのだろう。決してネガティブなことではない。これまで最高の競技生活を歩んできていた証だ。自分の競技生活全てに感謝している。

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まだ続きます…

 

最後にシュプのこれからについて真面目な話をしたい。僕は今年で最後だったが、皆は来年以降もあるし、これからが本番だ。
この四年間でサークルに積み重ねられてきたものは確かに存在する。シュプの戦力はこの四年間で、大エースが大量にポイントを稼ぐ形から全員でポイントを積み重ねる形に変わってきた。今年、各学年2人ずつAチームに選出されたように、毎年コンスタントに戦力を獲得しておりバランスが取れている。来年も新歓が成功すれば、間違いなく優勝候補筆頭だろうし、今後しばらくは上位を維持できるだろう。「強いシュプリンゲン」が実現されてきていると思う。

あとは、サークルとしての方向性がどのように変わっていくのか。今のシュプは過渡期にある。少なくとも、2年前のような脳筋スキー馬鹿サークルからは少しずつ変わってきている。
ジムが部員の溜まり場ではなくなったし、女子部員が増え、スキー以外のイベントも充実しつつある。酒を飲む人も増えた。今のシュプには、僕達の代でやったような極端なやり方は合わないかもしれない。正直、"脳筋"は井堀さんと尹先輩ありき、"スキー馬鹿"は美﨑ありきなところもあったから、今後も続けたければ新たな脳筋とスキー馬鹿を探す必要がある。

僕達の代の方向性にも問題点は色々あった。
まず、岩岳本戦に照準を合わせ過ぎていて、AWや村長杯のような他の大会へのモチベーションがやや低かった。これでは、個人的に国対予選などの他の大会に出ない限り、選手の目標が岩岳本戦だけになってしまう。シーズンのバランスが悪いし、今年のように岩岳がレース中止になった時に目的を見失いかねない。
また、Aチーム以外のメンバーや女子部員に目が行き届いていない部分があった。サークルとしての目標を岩岳団体総合優勝に設定した以上、やや実力至上主義的で、岩岳男子Aチームに重点を置きすぎてしまっていた感がある。ハードな練習メニューや酒を飲まない文化、たくさん食べる文化、プロテインを飲む文化などを極端な形でやってきたが、女子や初心者、運動強度の低い部員のモチベーション向上のためには、違う形の取り組みも必要だろう。

それでも僕は、この数年間でのシュプの目標設定や文化が好きだったし、良かったと思っている。少なくとも、「何がやりたいのか」と「どんなサークルなのか」がはっきりしていた。「岩岳”団体”総合優勝」を目指す「脳筋&スキー馬鹿」なサークルだ。新歓の時にもそうやってアピールしていたし、皆もそういう雰囲気を良いと思って入部してくれたはずだ。だからこそチームで団結できたし、トレーニングも合宿も大会も良い雰囲気でやってこれた。
これからどうなっていくにせよ、サークルとしての明確な目標や価値観を共有してほしいと僕は思っている。高い目標を共有すれば部員のモチベーションは上がるし、チームとして団結できる。独自の価値観があれば、帰属意識も高まるし、他のスキーサークルと差別化でき、新歓でのターゲッティングがしやすい。そして何より面白い。

シュプリンゲンの再構築が求められていると僕は思う。今後のシュプリンゲン像を皆で共有して、新しいシュプリンゲンを作っていって欲しい。

 

 

 

僕の視点で見たシュプリンゲンでの4年間を、岩岳を中心にして長々と書いてみました。あくまでも僕視点での話ですが。幹事長をやっていた2年間は、僕なりにサークルとしての方向性を作ろうと考えて、色々やってみたり、周りにアピールしたりしてきたつもりで、そのことも書きました。もちろん、全て皆の協力あってのものですが。
後半は、説教くさい話。部室申請ミスを起こして以来、自分が説教しても説得力ないよなーと我ながら思ってますが、個人的に今後のシュプに対して期待するところも心配するところも色々あるので、とりあえず自分のことは棚に上げて書きました。これからのシュプリンゲンの活躍に期待しています。泉澤筆頭に、みんな頑張ってね!来年こそ岩岳団体優勝!
四年間、本当に幸せなスキー生活を送りました。シュプリンゲンの関係者全員に心から感謝しています。ありがとうございました。

 

西﨑大悟