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『週刊アルペン語り』第二十六回 新たにアルペンを始める君へ

皆様初めまして。東京医科歯科大学医学部医学科6年の玉置と申します。「1旗門目激突」の人です。

公式戦で1旗門目に激突してDQになった玉置さん

 

シュプリンゲンM2の高峰くんや野口くんの同期にあたり,JSCという白馬さのさかのレーシングチームでご一緒させていただいております。

 

今回高峰くんにお声がけいただき,医科歯科6年間のスキー生活の総括と,過去の私のようにアルペン未経験から取り組む学生に向けてのエールとを書かせていただきます。

 

目次

0.医学生アルペンスキーヤーの生態

1.私のスキー歴

2.目標を決めよう

3.環境を選ぼう

4.お金と時間と道具を用意しよう

5.上手くなるために

6.最後に

 

0.医学生アルペンスキーヤーの生態

東医体;日本屈指の規模の大会

・カリキュラムはキツキツで全然滑れない

・優しくしてね

 

医学生アルペンスキーヤーは,3月上旬に開催される東日本医科学生総合体育大会(以下東医体と略します)アルペンスキー部門を目標に練習を重ねています。

東医体アルペンスキー部門は非常に規模の大きい大会で,男子270名・女子160名が出走します。種目はSL・GS・SGです。SL・GSは2本の合計タイムで競います。

目標としては

①完走...アルペン始めたての人はまずはこれ?

②2nd RUNに残る(〜100 or 120位)...1本目の時点で270名も出走するため,2本目の出走権は1本目の上位100 or 120名に限定されています。

③特シード2(〜30位)...翌年の東医体に特シード2で出走できます(出走順16〜30の中でランダム)

④特シード1(〜15位)...翌年の東医体に特シード1で出走できます(出走順1〜15の中でランダム)

⑤入賞(〜6位)...表彰状がもらえます

⑥表彰台(〜3位)...メダルがもらえます

⑦優勝(1位)...勝利

といったものがあるでしょうか。

クロカン部門については割愛します。ちなみに,クロカンとアルペン双方に出ると総合のタイトルも争うことができるようですよ。

 

医学部は必修の講義・試験が非常に多く,dutyから完全に解放されるのは2月中旬以降になることが多いです。確実に進級しようとすると11月〜1月の平日に滑走することは難しく,年末年始・週末・2月下旬にスキー場に出現することになります。

まあ,留年で滑走日数を伸ばすという荒業もありますね。留年するなら低学年のうちがオススメです。

 

医学生アルペンスキーヤーはカリキュラムの合間を縫って必死に練習しています。スキー場で見かけた際は、ぜひ優しく仲良くしていただけるとありがたいです。一見静かそうに見えても,コミュ障でシャイなだけで,スキーの話が出来る友達が欲しいとは思っているはずです。

 

1.私のスキー歴

・大学でアルペンスキーを始めた

・コロナ等々で2~4年時に大会出られず

・6年間で滑走120日くらい,少ないねえ

 

この項は自分語りになるので読み飛ばしていただいて大丈夫です。

これからアルペンを始める学生に読んでいただきたいのは2〜6です。

私は小学生〜中学生までレジャースキーをして,大学入学を機にアルペンスキーを始めました。何も知らなくて本当に色々苦労したので,6年前に戻ってこの記事を読みたい。

6年間で滑走日数は120日くらいだと思います。アルペンに限ると更に減ります。情けない限りです。

 

練習環境は,

1年...志賀高原と菅平の某クラブ、栂池で東大運動会と自主練

2年... 栂池で東大運動会と自主練

3年以降...白馬JSC

と,3年までチームもホームゲレンデも定まりませんでした。低学年のうちからフリーと基礎練を重視の練習をするチームを探すべきだったと思っています。あと,ビデオを撮ってもらいやすいチーム。

 

東医体の実績は1年→6年で

SL 99位→38位

GS 94位→DSQ

SG 91位→45位

でした。

 

「こいつ偉そうに色々書いてるくせに遅くね?成長なくね?」と思った方,その通りでございます。

今からアルペンを始める人々が,私のような残念な末路を辿らないことを祈ります。

 

直接会っている人にはよく話していますが,1年目の終わりに医科歯科スキー部の部停が決まった時点で,僕は「アルペンから身を引こう」と思いました。2年生になって「学生生活まだ立て直せるぞ」と思って、登山部に入り、ロードバイクを買い、完全に別の世界に行こうとしていました。

しかし気づけば,11月に1人でカンダハーにGS板・SL板を買いに行き,出場できる大会も無いのに冬にはアルペンスキーの練習をしていました(そのままコロナがやってきて東医体に3年連続出られないとは夢にも思いませんでしたが)。アルペンスキーの楽しさは他では代替できませんでした。

 

大した結果は残せませんでしたが、ご縁に恵まれて楽しく切磋琢磨しながら練習できた6年間でした。東大運動会スキー部の同期・1学年下の後輩、JSCの皆さん、医科歯科スキー部の皆さんには本当に感謝しています。ありがとうございました。

 

2.目標を決めよう

・スキーとの関わり方は人それぞれ

・部活以外にも学生生活の過ごし方は様々

・スキーちゃんとやるには金・労力・時間が必要

 

1年目はなかなか難しいかもしれませんが,2年目になる頃にはスキーへの取り組み方を自分自身で考えていくべきでしょう。

 

使い古された表現な気がしますが,多くの大学生にとって「学業・部活・バイト・恋愛」の全てを高い水準でこなすことは難しいです。何に重きを置くかは人それぞれですし「なんとなく楽しいから」もアルペンスキーの十分立派な動機になるでしょう。様々な楽しみ方ができると思いますし,どのように取り組むかは(所属する集団に迷惑をかけない範囲で)自由に決めて良いと思います。

 

ただし,限られた滑走日数の中で速くなりたいなら,それ相応のお金と労力と時間を割く必要があります(ある程度のモチベーションが無いと結局アルペンスキーから撤退する事になると思います...)。

僕自身は「嫌いになるくらいストイックに練習する」というのが苦手で,「楽しみながらできる範囲の努力をして楽しく滑り切る」という考え方でした。自分の考え方に後悔はありませんが,勝利を目的とするのならば甘すぎる考え方であったのも事実でしょう。

 

3.環境を選ぼう

・自分に合った環境を探す

・部活事情やチーム事情はそれぞれ

・コーチや練習仲間と良好な関係を築く

 

コネや運も絡んでくるところではありますが,練習環境が自分に合っているかどうかをよく考えて選ぶのが理想だと思います。もちろん,実際には自大学が所属するチームは既に決まっている場合が多く、自分で選び直すのは本当に難しいです。しかし,選手のレベルは様々ですし,今いるチームで自分に合ったコーチングが受けられるかどうかは分かりません。周囲のレベルが高過ぎても低過ぎても、効果的な練習にはなりにくいでしょう。

 

特に新しくアルペンを始める場合は,まずはフリーの基礎練を重点的に教えてくれるチームを選ぶべきです。上手い滑りをたくさん見ましょう。恥ずかしい滑りをたくさん撮影してもらってたくさんフィードバックをもらいましょう。レジャーで身についた壊滅的な滑りをぶっ壊すところがスタートです。むしろガチ初心者の方が最初から正しい滑りを習得できそうで羨ましい。(どのチームも最序盤は基礎練やってくれるはずなのでアルペン初心者の自覚がある人こそ10月11月から練習行こう!)

 

今いるチームでより良いコーチングを受けたければ,オフシーズンのトレーニングなどからマメに顔を出してやる気を表明し,しっかり目をかけてもらいましょう。「なんだそんなことかよ」と思うかもしれませんが,コーチだって人間ですし,双方が気持ち良くスキーできる関係性って大事だと思いませんか?

コーチングが合わないと感じる場合や納得いかない場合は,違うコーチに話を聞くのも手です。スキーの体の動かし方は日常生活とかけ離れていることが多く,同じ動きに対しても様々な呼び方・表現がなされる場合があります。違う言葉で説明してもらうとすんなり理解できた,なんてことはよくあります。

一緒に練習する仲間と話し合うのも良いですね。少なくとも勉学の場合は,人から話を聞くだけよりも人と教え合う方が習得率が高いそうです。拙くてもいいので自分の言葉で表現する事で理解が深まっていきます。個人競技ではありますが、孤独に滑り続けて上手くなれる競技では無いような気がしてます。コミュニケーションが大事なんだなあ。

 

4.お金と時間と道具を用意しよう

・夏のうちに稼ぐorパトロンを見つける(?)

・スキーの妨げになる予定を入れない

・プロテクターは出来る限り早めに用意

 

スキーは本当にお金がかかります。冬場になってからお金が足りずにスキーができないと困るので,夏場から計画的に貯蓄しましょう。あるいはスキーへの熱意を保護者等に伝えて出資を募るのも良いかもしれません。頑張れ。

僕のお金の使い方の問題かもしれませんが、道具は全部で50万くらいかかった気がしますし、毎シーズンのリフト券コーチフィー宿泊費用大会費用移動費用で40万くらいはかかってる気がします。文字に起こすとマジで泣きそうになる。でもスキーが好きだから仕方ない。どうしても安く済ませたかったら道具は先輩に安く譲ってもらいましょう。

 

時間の確保も当然重要です。予定もしっかりブロッキングです。貴重な冬季休暇に細切れの予定を入れるなど言語道断です。

僕は4年5年で脇道に逸れてしまい,その点は本当に後悔しています。高峰くんにも「3年まで真面目にスキーしてた男が恋人作った末路がアレ」とか言われてました。ぐうの音も出ないです。サラッと書きましたが,もしかすると最重要かもしれない。スキーを最優先事項に掲げて滑り続けることができれば,それだけでも相当速くなれるんでしょうね。

 

そして道具。最初は何もかも高く思えるかもしれませんが,プロテクター(レガース・チンガード・アームガード・脊椎パッドあたり)は早めに用意することをオススメします。そこをケチって怪我すると結局お金も時間もトビます。

 

5.上手くなるために

・フリーの基礎練の重要性

・ビデオ鑑賞(自分の滑りも他人の滑りも)

・道具のメンテナンス

・怪我しない体作り

 

アルペンスキーを6年間やってきて「基礎練やショートポールで出来ない事を,ロングポールで出来るはずがない」と痛感しました。頭をよく使ってフリー・基礎練を行い,自分の滑りを収めたビデオを繰り返し見て振り返る事,これが1番大事だと思います。漠然と滑っていても上手くはなるかもしれませんが,理想の滑りを言語化できるほど明確に理解した上で現実との擦り合わせをしていく方が遥かに効率がいいはずです。フリーの基礎練って自分のできない事が浮き彫りになるので精神的には結構キツイですけどね...。

プロのスポーツ選手って実際に試合に出ている時間よりも遥かに長い時間を基礎的な訓練にあてているんです。実践形式の練習ばかりしているわけではないらしいんですね。アルペンスキーで言えば,ポール・ゲートに入ってしまうと意識できる技術的なポイントってものすごく減るわけで,制約の少ないフリー・基礎練で技術的課題を直していくことが大事なんだと思います。

 

上手い人の滑りを繰り返し見て,理想型を頭に描けるようにするのも大事です。

僕の場合,リフトに乗ってる暇な時間は人々の滑りを眺めて勉強させていただいています。視界に誰もいない時は,スマホで過去のビデオを見ます。自分より遥かに上手い後輩のビデオを見て粗探しするのも結構勉強になります。具体的なスキー理論については,私みたいなヘナチョコスキーヤーは言及を避けておきます。ぜひ別の回のアルペン語りをご覧ください。

 

道具のメンテナンスも重要ですよね。詳細は他の記事を参照いただきたいのですが、ワックスの塗り込みやエッジチューンやビンディング調整など,どれも多分大事です。大会前に慌ててやるのではなく日頃から扱いに慣れておくべきでしょう。ワックスの塗り込みとか一朝一夕じゃ意味無さそうだし。分からなかったら練習仲間に聞きましょう。ググってもよくわからないし,一回聞くだけじゃ用語も覚えきれないし,オフシーズンに結構忘れてしまうんですよね。。。

 

滑走日数を稼ぐことと少し矛盾するかもしれませんが,怪我をしないように休みをとることも大事です。怪我をしてシーズン絶望とかになると,そもそも滑れません。大会も出れません。健康な身体あってのスポーツです。雪が降り始める前に,オフトレで故障しにくい身体を鍛え上げておきましょう。

 

6.最後に

全部でも一部でも読んでくれた方,ありがとうございました。

気づいたら5000字の特級呪物ができあがってしまいました。

 

極論を言ってしまえば,スキーで生きていける実力(プロやコーチとして評価される上手さ)を手にできない時点で,スキーは趣味でしかないです。これを読んでいる殆どの方がそうでしょう。

楽しみ方は本当に人それぞれだと思いますし,誰に何を強制されるものでも無いと思います。

 

この記事はあくまでも筆者の幻想です。「こんなにも楽しくて大好きなアルペンスキー,もし6年前に戻ってこういう事を意識して取り組んでいれば,もっと上手くなって速くなって良い結果が残せたかもしれないな」という戯言です。

 

誰かの参考になれば嬉しいですし,そうでなければ一笑に付すなりしてください。

アルペンスキーという競技に出会えて本当に良かったです。これからもどんな形でもいいからスキーは続けていきたいと思います。

 

『願わくはスキーを生涯の友とされんことを』

 

東京医科歯科大学6年

玉置


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