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『週刊アルペン語り』外伝 3 自分の実力 ~ スラローマー格付けチェック ~

どうも。タナベカップ2年連続スラローム1位の高峰(引退済みOB)です。追いコン、卒業式ありがとうございました。N2に突入したサトウエイジ曰く、やはり引退すると、抜け殻になりますね!

さて今回は、大学6年間でスラロームに苦労し、苦戦した思い出を振り返り、スラロームの技量感について感じたことを書いていきたいと思います。(あとブログに登場するのも1回あるか?ないか?)スラロームは技量がかなり求められる競技だと思っています。タイムも始めたての選手と、経験者でとんでもない差がつきます。ターン回数が他の種目に比べ増え、1つ1つが細かいのが理由といえますね。SLに比べGSやSGの方がタイムの差はつきません。

SLの技量を上げようとして、上手い人の滑りを見ることもあるでしょう。そういったシチュエーションで、国内トップ選手の滑りを見ます。バケモンすぎて何もわかりません。様々な技能が合わさったのが滑走技術で、それぞれの技能のレベルが高すぎて、全体像だけ見ても「あれ違う生き物じゃない?」となるだけなのです。それぞれの技能って何があるんですか?と思うかた。今回はわたくしの意見ですが、技能の段階を並べスラローマーの格付けを1段階づつ説明していきたいと思います。

 

[ビギナー]

  1. 外足に切り替えで乗る
  2. 外足にターン後半まで乗り続ける
  3. 切り替えで上に抜けない
  4. 上体を回して叩きに行かない
  5. 切り替えでスタンスを狭くする
  6. 切り替えで迎え角をとる
  7. 迎え角をとりターン前半で内径角を取る
  8. ターン後半のカービングでの抜け技術

[上級レーサー]

 

大体、スキー始めましてこんにちはの初心者は1の外足に切り替えで乗るところから始まりますね。高校で軽くアルペンをやってた経験者は3まではできている印象はあります。トップレーサーは上体がカッコよく映るので上体から真似したくなりますが、やはり足元から作っていく必要があります。(雪面コンタクトは足元からの為) 足元の指導から上体の指導に移ります。

 

最終系として、どこら辺までの技量があればええのかというと、8まであればSAJの100ポイントは切れるはずです。いわゆる競技選手ですね。全国学岩岳スキー大会ではSLトップ10の選手は8までは出来ています。岩岳でのシードは出走順によりますが、6ぐらいまで出来ていれば入れます。ちなみに言及されていない、これ以上先のレベル、いわゆるSAJ 60 切りの選手などは、ワンピースでいうところの新世界の覇王色持ちだと思っているので今回は触れません。

(岩岳トップはSAJ 60 ~、FIS フリップ レベル)

 

この技量進化表はコーチとの談義に一部基づきますが、個人的な感覚によってまとめて作成しています。高峰は8のターン後半の抜けを気持ち掴みました。常時できるわけではなかったので、岩岳大会では14位でした。岩岳のレベル帯での話ですが、ぜひ参考にしてみてください。

 

続きましては、これらの技量の詳細の説明を行います。

 

その1:外足に切り替えで乗る

これは、スキーで最重要な重心移動を身につけているかどうかになります。外足から外足の移動。ニュートラルから右ターンと左ターンで加重動作左右にが違うことを理解したいですね。人間って誰しも左右差があって、柔道や空手上がりだったりすると上半身を片側に半身にする癖が出ます。こういう癖もスキーではなくしていきたいですね。

 

その2:外足にターン後半まで乗り続ける

次に、ターン後半までしっかり外足に乗る技術を身につける必要があります。切り替えで外足に乗れてもターン後半で外足に乗れずに突っ張る人がいます。板の軌道を考えると、内足より、外足の方が長い距離(回転半径がでかいので)板が動きますね。ここで外に乗ってただ板の返りを待っていると、外足の脛が抜け、ターン後半で外足が突っ張る形になります。ターン後半で外足の脛を抜かないように、外腰をローテーションさせ、腰を抜けないようにしましょう。大体アルペンスキーを初めて100日経つと意識しなくても、この域には自然に到達しているように見えますが、意識するともっと早く到達できます。

 

その3:切り替えで上に抜けない

切り替えで腰をあげよう!ニュートラルにしよう!!と習いますが、上に抜けると後傾になります。ここで斜面垂直にニュートラル、というよりは素早い切り替えができるようになりたいですな。トップを浮かさない意識で滑れると良きです。

 

その4:上体を回して叩きに行かない

ポールにストレスをぶつけたい!わかります。こんな楽しい競技はありません!上手い人叩いてる!真似しよう。わかります。しかし、そこで上体だけ回して叩きにいくと大変なことになります。脇が開いて、力が抜け、ムダパンチをしている状態になるのです。ポールを叩きにいくのではなく、邪魔になったタイミングで叩くといったイメージがよく良いと言われています。自分は、外肩を後方に引くようなイメージで滑っていました。また、内側の手も叩く時に前方に出し、ムダな上体の回旋を避けると良いでしょう。

ちなみに上体をグルングルンしていると次のターンに向け素早い切り替え動作ができません。速い人の上体が安定して見えるのもムダパンチをしていないからです。

 

その5:切り替えでスタンスを狭くする

スタンスが広いのは高速系や荒れてるバーンで安定するとは言われます。しかしながら、基本的には狭い方が切り替えが早いですよね。ターン中に狭くしようと思ってもできません。切り替えのタイミング。スタートのタイミングから狭くする意識を持ちたいところです。

 

その6:切り替えで迎え角をとる

急に難易度が上がります。まず切り替えを自分の腰の下、板が体の外に出る前にできているのが前提となります。次のポールに向かって板を縦に入れよう!とみんな思いますが、あれ実は縦に入れていません。ポールに向かって斜めにぶち込んでます。板のエッジがグリップするには時間がかかり、縦に入れるとグリップ時にはポールを過ぎたタイミングになっており、テールが外に出ます。逆に素早く切り替え、斜めに角度を取り板を入射させることにより、縦になったタイミングでグリップし素早いタイトなターンを実現できます。ちなみにラインもタイトになります。これ難しいですよね 〜 (略)

 

その7:迎え角をとりターン前半で内径角を取る

迎え角で内径角を取るには内倒しないバランスも求められます。なんで、あんな、深い角度で!!て思いますが、素早い切り替えで板が外に向いた状態で迎え角を取ると自然に板が外に流れ、深い角度を取れるようになります。この時に内旋動作を入れるとポールにあたる前に弓形の形が作れるようになります。ぜひ実践あれ。

 

その8:ターン後半のカービングでの抜け技術

さてここは自分が今シーズンに学んだ(会得しようとした)技術になります。普段練習していないチームにお邪魔して速い選手との比較をしたりしますよね。動画作成アプリで二画面にして上下で眺めるわけですよ。なんでこんな差がつくんだ......初めはゴールした時の旗門数から確認し、次にどこで差が開いたのかを分析します。

以下はシーズン初めの鹿沢レーシングプレイスにお邪魔した時の選手との比較画像です。私、スラローマー高峰がSL初日だったという言い訳は置いておいて、ターン後半で外足の荷重の抜けが目立っています。が、自分の良いターンでもこの選手との差がつくのです。どこ?!

「ポールマキシマム付近の抜け技術」特にこの差でした。上の鹿沢フレンズは当たった瞬間に一瞬で膝が返るんです。見てみてください。

写真にすると一瞬すぎましたね。もはや見えない。板がグリップしたら、外側へ加圧するのではなlく、前方に切り込む動作をしています。板のエッジで作成したレール上を素早く走らせるイメージです。特に外足優先で走らせます。

この技術は大学生初めが多いようなチームではまず教えないと思います。しかしながらジュニア上がりの選手がいるチームや、雪面が固いスキー場のレーシングチームではよく教えています。グリップさせてから、包丁で切れ目をスーっと入れるようなイメージです。

一度、この技術習得してないなと気づいてからの解像度の上がり方は凄まじかったと記憶しています。トップ選手の動画を見るとあら不思議。みんな膝が素早く返っている。みんなできてるんや...意識してシーズンを過ごし、1ヶ月経った頃には時々発動できるようになっていました。ターン中、外足を外側に踏ん張っているだけの人。前に切り込んでみてください。世界変わりますよ?

鹿沢での衝撃から一ヶ月後



以上スラローム格付けチェックでした。ちなみに、これだけ出来てもスタート技術が覚束なければ試合では勝てません。上手いのか速いのか。アルペンの大会では速さが全てです。メンタルの調整や、硬いバーンや柔らかいバーン、掘れているバーンに合わせた技術。筋力、柔軟性、コース把握能力、ヘアピン、ストレートの処理技術なども求められます。特にビギナー陣は教えてもらうまでスケーティング込みのスタート技術がまるでないことが多いです。これはコーチがスタートではなく、下からコメントをし、動画も下の部分だけ撮るというアルペンスキー教育の賜物です。先輩は隙を見てスケーティングとスタートを教えたいところですね。

 

また成長には見本や手本となる選手の動画を持っていることも大事です。手本がなくて習字は書けませんよね。自分は関口快さんのSLスタート動画を練習時大体毎日眺めていました。眺めるといってもiPhoneの写真でコマ送りでスタートから漕ぎ、足の出し方を自分のイメージに落とし込んでいった感じです。気づけば少し似てきていたようです。(白馬高校出身スキーヤー曰くちょっと似てたらしい嬉しい) 使っているマテリアルがheadで同マテリアルを使ってて真似しやすかったとかもあるんですかね。

 

関口さんのSLスタート(2021年3月の春雪 @白馬さのさか)

 

皆さんも、目指す先の、技量が理解できる範囲の選手の動画を一本でも持っておくことを勧めます。ちなみに練習と同じコースだったり、雪質が似てる状況の動画だと良いですね。ではまたスラローマーの皆様、どこかの大会で。

 

明日は本編の更新があるとか!?乞うご期待